身近な所にSDGsの題材ある 「私たちは地球で暮らす『地球市民』」
〝SDGsマインド〟を育むために~世界につながる人づくり~ 兵庫教育大大学院 学校教育研究科 グローバル化推進教育リーダーコース教授 川﨑由花さん
SDGsは国連サミットで採択された、持続可能でより良い世界を目指す17の国際目標。2030年までの達成を目指している。6番目の「安全な水とトイレを世界中に」は、トイレが家内になく夜間に行くことが危険な国・地域が多いため。14番目の「海の豊かさを守ろう」は海のない地域に住む人にも関係ある。おいしい魚は豊かな山から流れ出た水で育つからだ。
SDGsが掲げる「誰一人取り残さない」の「誰」は発展途上国の人を連想しがちだが、どこにだって存在する。数年前、移民が多く貧困率が高い米テキサス州の教育長らから「子どもに3食はおろか2食を食べさせるのが大変」という話を聞いて衝撃を受けた。日本でも満足に食べられない子どもが増加傾向にあるのではないか。
米国では「家を買う」と言えば一般的に中古物件を差し、リノベーションを繰り返して住む。車や洋服、食器、下着まで売りに出す人や買う人がいて、遺品整理のためにもセールを行う。全てのものが資源で、使えるものは受け渡すという考え方が米国社会に根付いている。
SDGs関連本に目を引く目次タイトル「スナック菓子を食べるとスマトラゾウが絶滅する?」がある。論理はこうだ。安価で汎用(はんよう)性の高い「パーム油」の生産量は年間7千万トンで、さらに上昇を続ける。原料のアブラヤシは熱帯でしか生産できず、インドネシアの生産量は10年間で2倍増。商品裏の原材料に「植物油」などと表示されるためなじみが薄いが、パンやポテトチップス、せっけん、シャンプーなどに多く含まれ、日本人も意識しないまま毎日使っている。
パーム油の生産拡大は、熱帯林が減少して野生動物がすみかを奪われるだけでなく、人間も児童労働を強いられるなど、さまざまな問題を引き起こしている。しかし菜種油などと比べて生産性が非常に高く代替油脂がない。パーム油を使うか使わないかではなく、どのように生産するかという視点が問題の本質だろう。
身近なところにSDGsの題材はある。私たちは地球の中で暮らす「地球市民」。「学ぶ」「考える」「行動する」ことで、世界につながっていける。